隕石の初期処理
隕石の初期処理
南極で回収した隕石からは、以下の手順を経て、様々な基礎データが取られます。
解凍処理
南極で採集した隕石は、凍結したまま極地研へ運ばれ、いったん大型冷凍庫(−20℃)で保管されます。凍った隕石をそのまま室温中に持ち出すと、結露し、錆の原因となるためです。このため、特別な方法で解凍されます。解凍にあたっては、まず冷凍庫内で、アクリル製の真空デシケーターに入れられます。室温環境下に移動し、真空ポンプにより減圧され、半日から一日間、乾燥させます。乾燥した隕石は、試料袋(ビニール、あるいは、テフロン袋)に入れられ、隕石庫に保管されます。
初期記載
室温状態に戻った隕石は、改めて研究者により確認が行われ、明らかに地球の岩石は除き、野外名(フィールドネーム)から、正式名称に付け替えられます。隕石名称が決定した後、重量と大きさ(三方向)を測定します。そして、形や外見などの初期記載を行います。最後に、写真撮影(六方向)を行い、これらのデータはデータベースに登録されます。
試料分離
試料から小片に分離する際には、隕石処理室にて処理されます。隕石は、ハンマーとタガネにより割り取られるか、ダイアモンドのワイヤーソーで切断されます。これらの処理には、水などの液体を使用していません。なお、隕石処理室は、陽圧仕様(常に空気は室内から室外に流れる)になっており、廊下や前室からの塵やゴミの進入を防いでいます。
分析用試料(薄片)の作製
隕石処理室で分離された小片を用いて、岩石組織観察と鉱物組成分析のための研磨薄片を作製します。小片を樹脂に埋め込んだ後、片面を平面に削り、円形のスライドガラス(直径2.5cmのシリカガラス)に貼り付けます。そして、研磨盤を用いて目的の厚さまで削り、最終的にはダイアモンドにより鏡面研磨されます。完成した研磨薄片は、試料の厚さが0.03ミリの薄板になります。
組織観察及び組成分析
作製した薄片または厚片を用いて、X線マイクロプローブアナライザ(日本電子製JXA-8800)により、鉱物(かんらん石、輝石、斜長石)の組成が測定されます。鉱物組成データと、専門家による岩石組織の観察に基づき、隕石の分類が行われます。
隕石カタログの出版およびデータベースへの登録
基礎分類データ(隕石名、分類、組成データなど)は、カタログ(Meteorite Newsletter)として発行し、公開されます。公開された隕石は、研究用試料として研究者へ広く配分されます。また、データは、南極隕石データベースに登録します。同時に、国際隕石学会の隕石命名委員会にも提出され、正式に認可されます。